「女という生き物であった。」ある女の日記。
この世に、人間としての生を受ける。
母親という、初めての同性(メス)と出会う。父親という初めての異性(オス)と出会う。
名前を授かる。父・母の希望を背負う。
「食べる」「寝る」「排泄する」必要最低限を身につける。
ねがえる・座る・立つ・歩くを、習得する。意思疎通の方法、言語を覚える。
生き物に2種類あることを理解する。
私は、メスである。
『メスというものについて調べて見る。メスとは、「雌」と書くらしい。
動物の性別で、卵巣を持ち、卵や子を産むほう。また、植物で雌花をつけるもの。
メスであるべき条件をはっきりと判別しれていることに驚く。
この世には雌の反対側に雄という種類もいるらしい。果たして、本当にオスはメスの反対側にいるのだろうか?』
いつからであろう。自分のことを「私」と呼ぶようになったのは。
いつからであろう。女の子らしく女の子らしくと思うようになったのは。
いつからであろう。女としての人生に覚悟を決めたのは。
『そうであった。私は自分を女であると認めた。認めてからは大変だ。
同じ種類(メス)と自分の違いを比べる毎日だ。どうして、少しでも違うとソレをすることはやめるようにした。
周りもみんなお互いに、比べ合っているようで、気がついたら私は何もできることが無くなっていた。』
誰かが言っていた。もし、男が太陽なら、女は海だ。大きく広いどこまでも続いていく海。
全てを包み込む海、果てしのない空虚。
海は空虚であるがゆえに、太陽によって暖められ、満たされる。
満たされた時、自分は「海」であることをもう一度自覚する。
『ざぶーん。ざぶーん。ざぶーん。
本当だ、波の音が聞こえる。
力を抜いて物事を見て見ると、案外、私はわかりやすい女であったらしい。
もう一度、目をつぶってみる。
ざぶーん。ざぶーん。ざぶーん。』